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マイホーム譲渡損失の損益通算・繰越控除で税金を取り戻す方法【2025年最新版】
こんにちは!名古屋市瑞穂区の不動産会社「悠久ホームサービス」不動産売却サポートブログ編集部です。
マイホームを売却する際、購入時より安い価格でしか売れず、損失が生じてしまうケースは決して珍しくありません。特に住宅ローンが残っている状態での売却や、不動産市況の影響で思うような価格がつかない場合など、多くの方が経験される問題です。
しかし、このような譲渡損失が生じた場合でも、税制上の特例を活用することで、給与所得などの他の所得と相殺し、さらには数年間にわたって控除を受けることが可能です。これにより、既に納めた所得税の還付を受けたり、翌年以降の税負担を軽減したりすることができます。
本記事では、マイホームの譲渡損失における損益通算と繰越控除の制度について、わかりやすく解説いたします。制度の仕組みから具体的な節税効果、必要な手続きまで、実際に活用する際に知っておくべきポイントを網羅的にご紹介します。
マイホーム譲渡損失とは何か
マイホームの譲渡損失とは、居住用不動産を売却した際に、取得費や売却にかかった費用を含めた総額が売却価格を上回ることで生じる損失のことです。
譲渡損失が発生する典型的なケース
マイホームの譲渡損失は、以下のような状況で発生することが多くあります。
住宅ローン残債が売却価格を上回る場合: 購入時に組んだ住宅ローンの残債が、現在の不動産価値を上回っているケースです。特に購入から数年しか経過していない場合や、不動産価格が下落している地域でよく見られます。
不動産市況の悪化: 経済情勢の変化や地域の人口減少により、購入時よりも大幅に不動産価格が下落している場合です。
急な転勤や家族構成の変化: 予期せぬ転勤や離婚、介護などの事情により、住宅ローンの返済途中で売却せざるを得なくなった場合です。
損失の計算方法
譲渡損失は以下の計算式で求められます:
譲渡損失 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
取得費には、購入価格だけでなく購入時の仲介手数料や登記費用、不動産取得税なども含まれます。譲渡費用には、売却時の仲介手数料や印紙税、測量費用などが該当します。
この計算により損失が生じた場合、次に説明する損益通算や繰越控除の制度を活用することで、税務上のメリットを受けることができます。
損益通算の仕組みと適用条件
損益通算とは、不動産の譲渡損失を給与所得や事業所得などの他の所得と相殺することで、全体の課税所得を減額し、税負担を軽減する制度です。
損益通算の基本的な仕組み
通常、不動産の譲渡所得は分離課税とされ、他の所得との損益通算はできません。しかし、居住用不動産の譲渡損失については、特例により他の所得との損益通算が認められています。
例えば、年間の給与所得が500万円、マイホームの譲渡損失が200万円の場合、損益通算により課税所得は300万円となります。これにより、本来500万円の給与所得に対して課税されるはずだった所得税額から、200万円分の所得に対応する税額が減額されます。
適用条件
損益通算を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります:
居住用財産であること: 売却する不動産が、自己の居住用として使用していた家屋とその敷地である必要があります。別荘や投資用不動産は対象外です。
所有期間の要件: 売却年の1月1日において所有期間が5年を超えている必要があります。
住宅ローンの残債要件: 売却時点で住宅ローンの残債があることが条件となります。ただし、買換えの場合は住宅ローンの残債がなくても対象となる場合があります。
買換えの場合の条件: 新たに住宅を取得する場合は、新居の床面積が50平方メートル以上であることや、新たに住宅ローンを組むことなどの条件があります。
これらの条件を満たすことで、譲渡損失を他の所得と相殺し、税負担の軽減を図ることができます。
繰越控除制度の詳細と期間
繰越控除制度は、その年の他の所得では控除しきれなかった譲渡損失を、翌年以降に繰り越して控除できる制度です。
繰越控除の仕組み
損益通算を行っても控除しきれない譲渡損失がある場合、その損失を翌年以降最大3年間にわたって控除することができます。
具体例で説明すると、譲渡損失が800万円で、その年の給与所得が400万円の場合:
- 1年目:400万円の給与所得と400万円の譲渡損失を相殺(課税所得0円)
- 2年目以降:残りの400万円の譲渡損失を3年間で順次控除
繰越期間と適用要件
繰越期間: 譲渡損失が生じた年の翌年から3年間が繰越控除の適用期間です。
継続適用の要件: 繰越控除を受けるためには、譲渡損失が生じた年から控除を受ける年まで、連続して確定申告を行う必要があります。1年でも申告を怠ると、その後の繰越控除は受けられなくなります。
所得要件: 繰越控除を適用する各年において、合計所得金額が3,000万円以下である必要があります。
買換えと住宅ローンの特例
居住用財産の買換えに伴う譲渡損失の場合と、住宅ローンが残っている居住用財産の譲渡損失の場合では、適用要件が若干異なります。
買換えの場合: 新居の取得や住宅ローンの借入れについて、より詳細な要件が設けられています。
住宅ローン残債の場合: 売却時の住宅ローン残債から売却価格を差し引いた金額が損失の上限となります。
この繰越控除制度により、大きな譲渡損失が生じた場合でも、数年間にわたって税負担の軽減効果を享受することができます。
具体的な節税効果と計算例
実際の数値を用いて、損益通算と繰越控除によってどの程度の節税効果が得られるかを具体的に見ていきましょう。
基本的な計算例
前提条件:
- 年収:600万円(給与所得控除後の所得500万円)
- マイホーム譲渡損失:700万円
- 所得税率:20%(復興特別所得税含む)
- 住民税率:10%
1年目(譲渡損失発生年):
- 通常の課税所得:500万円
- 損益通算後の課税所得:0円(500万円 - 500万円)
- 所得税の軽減額:500万円 × 20% = 100万円
- 住民税の軽減額:500万円 × 10% = 50万円
- 繰越損失:200万円(700万円 - 500万円)
2年目:
- 給与所得:500万円
- 繰越控除:200万円
- 課税所得:300万円(500万円 - 200万円)
- 所得税の軽減額:200万円 × 20% = 40万円
- 住民税の軽減額:200万円 × 10% = 20万円
合計節税効果:
- 所得税:140万円
- 住民税:70万円
- 総節税額:210万円
住宅ローン残債がある場合の特例
住宅ローンの残債がある場合、損失額の計算方法が異なります。
計算例:
- 売却価格:2,000万円
- 住宅ローン残債:2,500万円
- 譲渡損失:500万円(2,500万円 - 2,000万円)
この場合、実際の取得費や譲渡費用に関係なく、住宅ローン残債と売却価格の差額が譲渡損失として計算されます。
節税効果を最大化するポイント
適切な売却タイミング: 所得が高い年に売却することで、より高い税率での軽減効果が期待できます。
確定申告の継続: 繰越控除を受けるためには、控除期間中継続して確定申告を行うことが必須です。
他の控除との併用: 医療費控除やふるさと納税などの他の控除制度と併用することで、さらなる節税効果が期待できます。
これらの計算例からわかるように、譲渡損失の損益通算と繰越控除制度を適切に活用することで、数百万円規模の節税効果を得ることが可能です。
手続きの流れと必要書類
損益通算と繰越控除の適用を受けるためには、適切な手続きと書類の準備が必要です。
確定申告の手続き
申告期限: 譲渡損失が生じた年の翌年3月15日までに確定申告を行います。
申告書の種類: 確定申告書に加えて、「譲渡所得の内訳書」と「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の計算書」を提出します。
継続申告: 繰越控除を受ける期間中は、毎年継続して確定申告を行う必要があります。
必要書類一覧
売却関連書類:
- 売買契約書のコピー
- 売却時の仲介手数料等の領収書
- 測量費用等の領収書
取得関連書類:
- 購入時の売買契約書のコピー
- 購入時の仲介手数料等の領収書
- 登記事項証明書
住宅ローン関連書類:
- 住宅ローンの残高証明書
- 金融機関からの返済予定表
その他の書類:
- 住民票(居住用であることの証明)
- 戸籍の附票(売却前5年間の居住歴の証明)
税務署での相談
事前相談の重要性: 複雑な計算や特例の適用については、事前に税務署や税理士に相談することをお勧めします。
必要書類の確認: 個別のケースによって必要な書類が異なる場合があるため、事前に確認しておくことが重要です。
電子申告の活用: e-Taxを利用することで、自宅から申告手続きを行うことができ、添付書類の提出も簡素化されます。
注意すべきポイント
申告期限の厳守: 期限を過ぎてしまうと、繰越控除の適用が受けられなくなる可能性があります。
書類の保管: 控except関連の書類は、控除期間中は適切に保管しておく必要があります。
税制改正への対応: 税制は年々改正されるため、最新の情報を確認して手続きを行うことが重要です。
適切な手続きを行うことで、制度の恩恵を最大限に活用することができます。
まとめ
マイホームの譲渡損失における損益通算と繰越控除制度は、不動産売却で損失が生じた場合の重要な税務上の救済措置です。
住宅ローンの残債がある状態での売却や、不動産市況の影響による価格下落など、さまざまな理由でマイホームの売却損が発生した場合でも、この制度を活用することで大幅な税負担の軽減が可能です。
制度の活用には、居住用財産であることや所有期間などの要件を満たす必要がありますが、条件を満たせば給与所得などの他の所得と損失を相殺でき、さらに控除しきれない損失は3年間繰り越すことができます。
数百万円規模の節税効果が期待できるこの制度ですが、適用を受けるためには適切な確定申告手続きが必要です。必要書類の準備と継続的な申告を怠らず、税務署や専門家への相談も活用しながら、確実に制度の恩恵を受けるようにしましょう。
マイホームの売却で損失が生じてしまった場合は、諦めずにこれらの制度を積極的に活用して、税負担の軽減を図ってください。