news
不動産売却で買主からよく指摘されるポイント|名古屋の事例と対策

不動産売却を進める中で、「内見後に買主から様々な指摘を受けた」「契約直前になって問題が発覚した」という経験をされる方は少なくありません。買主からの指摘は、価格交渉の材料となったり、場合によっては契約が破談になることもあります。
本記事では、名古屋市内の不動産売却において買主からよく指摘されるポイントと、その対策について、実際の事例を交えて詳しく解説します。事前に対策を講じることで、スムーズな売却と適正価格での成約を実現しましょう。
名古屋でよくある売却時のトラブルと指摘事項
名古屋市内で不動産を売却する際に、買主から指摘されやすい問題を見ていきましょう。
建物に関する指摘
雨漏り 名古屋市内の古い住宅では、雨漏りが非常に多く指摘されます。特に以下の箇所が問題になりやすいです。
- 屋根(瓦のずれ、板金の劣化)
- ベランダ・バルコニーの防水層
- サッシ周りのコーキング劣化
- 外壁のひび割れ
梅雨時期や台風シーズンには特に雨漏りが顕在化しやすく、内見時に天井や壁のシミを買主に指摘されることがあります。
シロアリ被害 名古屋市は温暖で湿度が高い気候のため、シロアリ被害が発生しやすい地域です。特に以下の場所で被害が多く見られます。
- 床下の土台や束柱
- 浴室周辺の柱や土台
- 玄関周りの木部
- 畳の下の根太
買主の建物状況調査(インスペクション)で発覚するケースが多く、修繕費用として数十万円から数百万円の値引きを要求されることがあります。
外壁・基礎のひび割れ 経年劣化による外壁や基礎のひび割れも、よく指摘されるポイントです。
- 構造的に問題のある大きなひび割れ(幅0.5mm以上)
- 基礎の亀裂
- モルタル外壁の剥離
- タイルの浮き
特に基礎のひび割れは、建物の構造的な問題を示唆するため、買主が購入を躊躇する大きな要因となります。
設備の不具合 給湯器、エアコン、換気扇などの設備の不具合も指摘されやすいポイントです。
- 給湯器の故障や経年劣化
- エアコンの効きが悪い
- 換気扇の異音や動作不良
- 水栓の水漏れ
- トイレの不具合
特に給湯器は寿命が10年〜15年程度のため、築年数が経過した物件では交換を求められることがあります。
耐震性の問題 1981年以前に建築された旧耐震基準の建物は、耐震性能が現行基準を満たしていないため、買主から懸念されることが多いです。
名古屋は南海トラフ地震のリスクが高い地域として認識されているため、耐震性への関心が特に高い傾向にあります。
土地に関する指摘
境界の未確定 隣地との境界が確定していない土地は、買主から必ず指摘されます。
- 境界標が設置されていない
- 隣地所有者との境界確認書がない
- 測量図が古い、または存在しない
- 隣地とのトラブル履歴がある
金融機関の融資審査でも境界未確定は問題視されるため、買主にとって大きな懸念材料となります。
擁壁の老朽化 名古屋市内、特に丘陵地の多い千種区、昭和区、天白区などでは、擁壁の問題が多く見られます。
- 古い擁壁(築40年以上)
- ひび割れや傾き
- 排水処理が不十分
- 建築確認を受けていない擁壁
擁壁の作り替えには数百万円から千万円以上かかることもあり、大幅な値引き交渉の材料となります。
地盤の問題 軟弱地盤や盛土の問題も指摘されることがあります。
- 過去に田んぼや池だった土地
- 盛土造成地
- 液状化の可能性がある地域
- 近隣で地盤沈下が発生している
名古屋市内では、港区や中川区の低地、守山区や天白区の造成地などで、地盤に関する懸念が示されることがあります。
接道の問題 建築基準法の接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接すること)を満たしていない土地は、必ず指摘されます。
- 接道幅が2m未満
- 幅員4m未満の道路にしか接していない
- セットバックが必要な場合
- 私道に接している場合の通行・掘削承諾
再建築不可物件の場合、価格に大きな影響を与えます。
法的・権利関係の指摘
越境物 隣地からの越境、または隣地への越境も問題となります。
- 樹木の枝や根の越境
- 建物の一部(屋根や雨樋)の越境
- ブロック塀の越境
- 電線やケーブルの越境
越境問題は隣地所有者との交渉が必要となるため、売却前の解決が望ましいです。
建築基準法・都市計画法の制限 法的な建築制限がある場合、買主から指摘されます。
- 建ぺい率・容積率オーバー
- 高度地区制限
- 日影規制
- 防火地域・準防火地域の制限
特に増築を繰り返した古い住宅では、現行法規に適合していないことがあります。
未登記建物 増築部分や車庫などが未登記の場合、指摘されることがあります。未登記建物は法的に問題があり、融資審査でもマイナス要因となります。
買主から指摘されやすいポイント
内見や契約交渉の過程で、買主が特に注目するポイントを理解しておきましょう。
内見時に注目される箇所
第一印象を左右する玄関周り 買主が最初に目にする玄関周りは、物件全体の印象を大きく左右します。
- 玄関ドアの傷や劣化
- 玄関タイルのひび割れや汚れ
- 下駄箱の状態
- 照明の明るさ
- 臭い
特に臭いは買主に強い印象を与えるため、注意が必要です。
水回りの状態 キッチン、浴室、トイレ、洗面所などの水回りは、リフォーム費用がかかる箇所として、買主が入念にチェックします。
- カビや水垢の汚れ
- 設備の古さ
- 水栓の水漏れ
- 排水の詰まり
- 換気扇の状態
水回りのリフォームは数十万円から数百万円かかるため、状態が悪いと大幅な値引き要求につながります。
日当たりと風通し 日当たりと風通しは、住み心地に直結するため、買主が重視するポイントです。
- 南向きの窓の有無
- 日中の日当たり時間
- 風の通り道
- 隣家との距離
内見は午前中や午後の早い時間に設定し、日当たりの良さをアピールすることが重要です。
収納スペース 収納の少なさは、特に女性の買主から指摘されやすいポイントです。
- クローゼットの広さ
- 収納の数
- 使い勝手
- デッドスペースの有無
騒音・振動 周辺環境の騒音や振動も、買主が気にするポイントです。
- 道路交通の騒音
- 鉄道の騒音・振動
- 近隣からの生活音
- 工場や商業施設の音
内見時には静かでも、時間帯によっては騒音が発生することもあるため、事前に状況を伝えることが誠実な対応といえます。
契約前の調査で発覚しやすい問題
建物状況調査(インスペクション)での指摘 買主が専門家による建物状況調査を実施した場合、以下のような問題が発覚することがあります。
- 構造的な問題(基礎、柱、梁など)
- 雨漏りの痕跡
- シロアリ被害
- 断熱材の不足
- 設備の不具合
インスペクションの結果、数十万円から数百万円の修繕費用が見積もられ、その分の値引きを要求されることがあります。
土地家屋調査士による測量での発見 買主が測量を実施した場合、以下のような問題が発覚することがあります。
- 実測面積と登記簿面積の相違
- 越境の発見
- 境界の不明確さ
- セットバックの必要性
役所調査での判明事項 不動産会社が役所で調査を行った際に、以下のような制限が判明することがあります。
- 建築制限
- 都市計画道路の計画
- 災害リスク(土砂災害警戒区域など)
- 埋蔵文化財包蔵地の指定
名古屋市では、ハザードマップで浸水想定区域や液状化リスクを確認できます。これらの情報は必ず買主に開示する必要があります。
売主が注意すべき告知義務
売主には、物件の状態や周辺環境について、買主に告知する義務があります。
告知義務の基本
2020年4月の民法改正により、売主の責任は「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変わりました。これにより、契約内容に適合していない場合、売主は責任を負うことになります。
告知すべき内容 売主が知っている事実は、基本的にすべて告知する必要があります。
- 建物・設備の不具合
- 過去の修繕履歴
- 事故・事件(心理的瑕疵)
- 近隣とのトラブル
- 周辺環境の問題
告知しなかった場合のリスク 告知義務を怠ると、以下のようなリスクがあります。
- 契約解除
- 損害賠償請求
- 修補請求
- 代金減額請求
告知義務違反は、売主にとって大きな経済的損失につながるため、誠実な開示が重要です。
具体的な告知事項
建物の不具合
- 雨漏りの経験(過去のものも含む)
- シロアリ被害または予防駆除の履歴
- 給排水設備の不具合
- 構造的な問題
- リフォーム・修繕の履歴
土地の問題
- 地盤沈下の経験
- 擁壁の状態
- 境界の不明確さ
- 越境の存在
- 土壌汚染の可能性
法的な制限
- 建築基準法違反
- 接道義務の不適合
- 建ぺい率・容積率オーバー
- 市街化調整区域などの制限
周辺環境
- 騒音・振動・臭気
- 近隣の嫌悪施設(墓地、火葬場、ゴミ処理施設など)
- 近隣とのトラブル
- 今後の開発計画
心理的瑕疵
- 物件内での死亡事故(自殺、他殺、孤独死など)
- 火災や水害などの災害履歴
- 近隣での事件・事故
国土交通省のガイドラインでは、自然死や日常生活での事故死は告知不要とされていますが、買主から質問された場合は正直に答える必要があります。
物件状況確認書(告知書)の重要性
不動産売却では、「物件状況確認書」または「告知書」という書面を作成し、売主が知っている物件の状態を記載します。
記載する主な内容
- 雨漏りの有無
- シロアリ被害の有無
- 給排水設備の故障
- 建物の傾き
- 近隣との境界
- 越境の有無
- 騒音などの環境問題
- 事件・事故の有無
「知らない」「分からない」という回答も可能ですが、明らかに知っているはずのことを隠すと、後々トラブルになります。
トラブル防止のための事前対策
買主からの指摘やトラブルを防ぐために、売却前に実施すべき対策をご紹介します。
対策1:ホームインスペクション(建物状況調査)の実施
売却前に自ら専門家による建物状況調査を実施することで、問題を事前に把握できます。
メリット
- 問題点を事前に把握し、修繕または価格に反映できる
- 買主に安心感を与えられる
- 価格交渉が円滑になる
- 売却後のトラブルを防げる
費用 一般的な戸建て住宅で5万円〜10万円程度
実施のタイミング 売却活動開始前、または買主が現れた時点で実施します。
対策2:主要な不具合の修繕
重大な不具合は、売却前に修繕することを検討しましょう。
修繕を検討すべき箇所
- 雨漏りの修理
- 給排水設備の修理
- 外壁の補修
- シロアリ駆除・予防
費用対効果の検討 修繕費用と、修繕による売却価格の上昇を比較検討します。例えば、50万円の修繕で100万円価格が上がるなら、修繕した方が得策です。
ただし、全てを修繕する必要はありません。買主が自分でリフォームしたい場合もあるため、不動産会社と相談しながら判断しましょう。
対策3:測量・境界確定の実施
境界が不明確な場合、売却前に測量と境界確定を行うことをお勧めします。
メリット
- 買主の不安を解消できる
- 金融機関の融資が通りやすくなる
- 価格交渉が有利になる
- 売却後のトラブルを防げる
費用 名古屋市内で30万円〜50万円程度(隣接地の数や地形により変動)
実施のタイミング 売却活動開始前に実施するのが理想的ですが、買主が見つかってから実施する場合もあります。
対策4:清掃・整理整頓の徹底
内見時の第一印象は非常に重要です。徹底的な清掃と整理整頓を行いましょう。
特に重点的に清掃すべき箇所
- 玄関周り
- キッチン
- 浴室・トイレ
- 洗面所
- 窓ガラス・サッシ
- ベランダ
専門のハウスクリーニング業者に依頼するのも効果的です。費用は3万円〜10万円程度ですが、内見時の印象が大きく改善します。
対策5:臭い対策
臭いは買主に強い印象を与えるため、しっかりと対策しましょう。
よくある臭いの原因
- ペット臭
- タバコ臭
- カビ臭
- 生活臭
- 排水の臭い
対策方法
- 徹底的な換気
- 消臭剤の使用
- カーペットやカーテンのクリーニング
- 排水管の清掃
- 壁紙の張り替え(タバコ臭がひどい場合)
対策6:必要書類の準備
スムーズな売却のために、以下の書類を事前に準備しておきましょう。
必要書類
- 登記済権利証または登記識別情報
- 固定資産税納税通知書
- 建築確認済証・検査済証
- 測量図(あれば)
- 建物図面・間取り図
- 設備の取扱説明書・保証書
- リフォーム・修繕の記録
- 管理規約(マンションの場合)
- 物件状況確認書(告知書)
書類が揃っていると、買主に好印象を与え、契約もスムーズに進みます。
対策7:適正価格の設定
問題があることを前提に、適正な価格設定を行うことも重要です。
価格設定の考え方
- 問題点を考慮した価格設定
- 買主の修繕費用を見込んだ価格
- 相場との比較
高すぎる価格設定は、買主からの値引き交渉を招きます。最初から適正価格で売り出す方が、結果的にスムーズな売却につながることが多いです。
買主から指摘を受けたケースと解決方法
実際に名古屋市内で買主から指摘を受け、それを解決した事例をご紹介します。
事例1:雨漏りの指摘(昭和区)
状況 築35年の木造2階建て。内見後に買主が建物状況調査を実施したところ、過去に雨漏りがあった形跡が発見されました。売主は雨漏りを修理したことを忘れており、告知していませんでした。
買主からの指摘 「雨漏りの修理痕があるが、告知されていない。現在も雨漏りしているのではないか。」
解決方法 売主が過去の雨漏り修理について説明し、修理の記録を提示。さらに専門業者による再検査を実施し、現在は雨漏りしていないことを証明しました。その上で、万が一今後雨漏りが発生した場合の保証として、50万円の価格減額に応じることで合意しました。
ポイント 過去の修理履歴も含めて、最初から告知しておけば、このようなトラブルは避けられました。
事例2:境界未確定の指摘(千種区)
状況 築40年の戸建て。境界標が設置されておらず、測量図もありませんでした。買主が住宅ローンを申し込んだところ、金融機関から境界確定を求められました。
買主からの指摘 「境界が確定していないと住宅ローンが借りられない。境界確定をしてほしい。」
解決方法 売主が土地家屋調査士に依頼して測量と境界確定を実施。費用は40万円かかりましたが、これにより住宅ローンの審査が通り、契約を成立させることができました。境界確定の費用は売主負担としましたが、買主も契約できたことで満足されました。
ポイント 売却前に境界確定を済ませておけば、契約後の追加費用や遅延を避けられました。
事例3:シロアリ被害の指摘(緑区)
状況 築30年の木造2階建て。内見時には問題が見つからなかったものの、買主が実施した建物状況調査でシロアリ被害が発見されました。
買主からの指摘 「床下にシロアリ被害がある。駆除と修繕が必要だ。」
解決方法 専門業者による調査の結果、シロアリ駆除と部分的な修繕で対応可能と判明。見積もりは80万円でした。売主と買主で協議し、以下の対応で合意しました。
- 売主がシロアリ駆除を実施(費用20万円)
- 残りの修繕費用相当分として60万円の価格減額
ポイント 売主が自らシロアリ駆除を実施することで、買主に誠意を示し、契約を成立させることができました。
事例4:擁壁の老朽化指摘(天白区)
状況 築50年以上の古い擁壁がある土地。買主が専門家に確認したところ、擁壁の安全性に懸念があると指摘されました。
買主からの指摘 「擁壁が古く、安全性に問題がある可能性がある。擁壁の作り替え費用として値引きしてほしい。」
解決方法 擁壁の作り替えには500万円以上かかる見込みでしたが、構造の専門家による調査の結果、当面は問題なく使用できることが確認されました。その上で、将来的なリスクを考慮し、200万円の価格減額で合意しました。
ポイント 専門家による客観的な調査により、過度な値引きを避けることができました。
事例5:近隣トラブルの告知不足(中村区)
状況 売却後に、買主から「隣家とゴミ出しを巡るトラブルがあったことを聞いた。なぜ告知しなかったのか」とクレームを受けました。
買主からの指摘 「近隣トラブルがあったことを知らされていなかった。告知義務違反ではないか。」
解決方法 売主は「すでに解決済みのトラブルだったので告知の必要はないと思った」と説明しましたが、買主は納得せず、最終的に50万円の損害賠償金を支払うことになりました。
ポイント 過去のトラブルであっても、買主が知りたいと思うような情報は告知すべきでした。特に近隣関係は住み心地に直結するため、些細なことでも伝えておくべきです。
まとめ|誠実な対応がトラブル防止の鍵
不動産売却において、買主からの指摘やトラブルを完全に避けることは難しいかもしれません。しかし、事前の対策と誠実な告知により、多くの問題は防ぐことができます。
トラブル防止のポイント
- 建物状況調査(インスペクション)で問題を事前把握
- 重大な不具合は売却前に修繕を検討
- 境界が不明確な場合は測量・確定を実施
- 知っている情報は全て告知する
- 物件状況確認書を正確に記載する
- 清掃・整理整頓で第一印象を良くする
- 問題を考慮した適正価格の設定
売主が誠実に対応し、買主に安心感を与えることが、スムーズな売却と適正価格での成約につながります。問題がある物件でも、それを正直に伝え、適切な価格設定を行えば、必ず買主は見つかります。
名古屋市内での不動産売却は、地域特性を理解し、豊富な経験を持つ専門家に相談することをお勧めします。
不動産売却のトラブル相談は、悠久ホームサービスへ
当社では、名古屋市内の不動産売却において、買主からの指摘やトラブルへの対応経験が豊富にあります。建物状況調査(インスペクション)の手配、境界確定のサポート、適切な告知内容のアドバイスなど、トラブルを未然に防ぐためのサポートを行っています。売却相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
関連記事
監修者情報

悠久ホームサービスは名古屋市に根差した地域密着型の不動産会社です。専門知識を持つスタッフが、売買・相続・贈与・空き家活用など幅広くサポートし、お客様一人ひとりに合わせた解決策をご提供します。購入や売却の後も丁寧にフォローし、安心してお任せいただける体制を整えています。名古屋市で不動産相続や売却をお考えの際は、ぜひ当社にご相談ください。
代表取締役 山内 章寛
