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築古マンションは"売る時期"で価格が変わる?名古屋の実例と相場推移

「築20年を超えたマンション、このまま持ち続けていいのだろうか」「大規模修繕の案内が来たけど、その前に売った方がいいの?」——築古マンションを所有している方の多くが、売却のタイミングに悩んでいます。
築古マンションの価格は、築年数だけでなく、大規模修繕の実施時期や管理状態によって大きく変動します。同じマンションでも、売却時期が3年違うだけで数百万円の差が生まれることも珍しくありません。
この記事では、名古屋市内の実際の取引データと具体的な事例をもとに、築古マンションの最適な売却タイミングを解説します。修繕積立金の値上げ、管理組合の運営状況、そして名古屋特有の市場動向を踏まえて、あなたのマンションの「売り時」を見極めましょう。
築年数による価格下落曲線
マンションの価格は、築年数とともに変化します。ただし、その下落は一定ではありません。
築年数別の価格推移パターン
新築から築30年までの価格推移には、明確なパターンがあります。
築0〜5年:急激な下落期
新築マンションは、購入直後から価値が下がり始めます。いわゆる「新築プレミアム」が剥がれ落ちる時期です。
名古屋市内の平均的なデータでは、新築価格を100とした場合、築5年で80〜85程度まで下落します。年間で3〜4%の下落率です。
ただし、名古屋駅周辺や栄などの都心立地、人気の高い千種区・昭和区などでは、下落幅が2〜3%程度に抑えられるケースもあります。
築6〜15年:緩やかな下落期
この時期は価格下落が緩やかになります。年間の下落率は1〜2%程度です。
設備や内装にまだ大きな劣化が見られず、住宅ローン控除の対象(築25年以内)にも該当するため、買い手の需要が比較的安定しています。
名古屋市内では、この築年数帯のマンションは「新しすぎず古すぎず、手頃な価格」として需要が高く、適正価格であれば売却しやすい時期と言えます。
築16〜25年:下落加速期
築20年前後から、価格下落が再び加速します。
この時期には最初の大規模修繕が完了し、次回の大規模修繕に向けて修繕積立金が値上げされるケースが多くなります。また、設備の老朽化も目立ち始め、買主が購入後にリフォームを前提とすることが増えます。
新築時を100とした場合、築20年で60〜70程度、築25年で50〜60程度まで下落するのが一般的です。
築26年以上:底値に近づく期
築25年を超えると、住宅ローン控除が使えなくなるため(耐震基準適合証明書がない場合)、買い手が限定されます。
ただし、価格下落は徐々に緩やかになり、築30年を過ぎると「底値」に近い状態で推移します。この時期は、立地と管理状態が価格を大きく左右します。
名古屋市内でも、駅近や人気学区のマンションは底堅く推移する一方、郊外の築古マンションは流動性が低下し、売却に時間がかかる傾向があります。
名古屋市内のエリア別特性
名古屋市内でも、エリアによって築古マンションの価格推移は異なります。
都心部(中区・中村区)
リニア開業への期待や再開発の進展により、築古マンションでも価格が下げ止まり、あるいは上昇しているケースがあります。特に名古屋駅徒歩圏内のマンションは、築30年を超えても需要が途切れません。
人気住宅地(千種区・昭和区・瑞穂区)
文教地区として人気が高く、築古マンションでも安定した需要があります。学区を重視するファミリー層からの引き合いが強く、適正価格であれば比較的スムーズに売却できます。
郊外部(守山区・緑区・天白区)
新築マンションの供給が多いエリアでは、築古マンションは競合が厳しくなります。駅近物件は健闘していますが、駅から離れた物件は価格下落が大きく、売却期間も長期化する傾向があります。
修繕積立金・管理状態が与える影響
築古マンションの価値は、築年数だけでは決まりません。管理組合の運営状況が大きく影響します。
修繕積立金の値上げリスク
多くのマンションでは、新築時に修繕積立金を低めに設定し、段階的に値上げしていく計画を立てています。
典型的な修繕積立金の推移
名古屋市内の70㎡3LDKマンションの例:
- 新築時:月額8,000円
- 築10年:月額10,000円
- 築20年:月額15,000円
- 築30年:月額20,000円〜25,000円
この値上げスケジュールは、長期修繕計画に基づいて決定されますが、計画通りに積立金が貯まっていないマンションも少なくありません。
修繕積立金が不足しているマンションの特徴
- 新築時の積立金設定が低すぎた
- 大規模修繕の費用が想定を超えた
- 空室が増え、滞納が発生している
- 管理組合の運営が機能していない
修繕積立金が不足すると、突然の値上げや一時金徴収が発生します。月額が2倍、3倍になるケースもあり、これが発表されると売却が難しくなります。
売却タイミングへの影響
修繕積立金の大幅値上げが決定される前に売却することが、価格面で有利になります。総会資料や理事会議事録で、今後の値上げ計画を確認しましょう。
管理組合の財務状況
マンションの資産価値は、管理組合の財務健全性に大きく依存します。
確認すべき財務指標
- 修繕積立金の残高:長期修繕計画に対して十分に貯まっているか
- 管理費・修繕積立金の滞納率:5%を超えると要注意
- 大規模修繕の実施履歴:計画通りに実施されているか
- 借入金の有無:修繕費用のために借入をしていないか
名古屋市内でも、管理が行き届いたマンションとそうでないマンションでは、同じ築年数でも数百万円の価格差が生まれます。
良好な管理状態のマンション
- 共用部が清潔に保たれている
- 設備の定期点検・メンテナンスが実施されている
- 修繕積立金が計画通りに貯まっている
- 管理組合の総会・理事会が定期的に開催されている
このようなマンションは、築古でも価格が下がりにくく、買い手も見つかりやすい傾向があります。
スラム化リスクの見極め
築古マンションで最も警戒すべきは「スラム化」のリスクです。
スラム化の兆候
- 空室率が30%を超えている
- 外国人居住者が急増し、コミュニティが崩壊している
- 共用部の清掃が行き届いていない
- エレベーターや給排水設備の故障が頻発
- 管理費・修繕積立金の滞納が常態化
- 理事のなり手がいない
これらの兆候が見られたら、早期の売却を検討すべきです。スラム化が進行すると、売却価格が大幅に下落し、最悪の場合は買い手が全くつかなくなります。
名古屋市内でも、港区や中川区の一部エリアで、築古マンションのスラム化が問題になっています。自分のマンションが該当しないか、冷静に見極めることが重要です。
大規模修繕の前後で変わる売却価格
大規模修繕は、マンションの資産価値に大きな影響を与えます。
大規模修繕の実施周期
一般的に、マンションの大規模修繕は12〜15年周期で実施されます。
1回目の大規模修繕(築12〜15年)
- 外壁塗装・防水工事
- 鉄部塗装
- 共用部の修繕
- 費用目安:1戸あたり70〜100万円
2回目の大規模修繕(築24〜30年)
- 外壁塗装・防水工事(全面)
- 配管設備の更新
- エレベーター設備の改修
- バリアフリー化工事
- 費用目安:1戸あたり100〜150万円
3回目以降(築36年以降)
- 大規模な設備更新
- 耐震補強工事(必要に応じて)
- 費用目安:1戸あたり150万円以上
修繕前と修繕後の価格差
大規模修繕の前後で、マンションの売却価格はどう変わるのでしょうか。
修繕直後のメリット
- 外観が新しくなり、第一印象が向上
- 向こう10年程度は大きな修繕が不要という安心感
- 内覧時の印象が良く、買い手がつきやすい
修繕直前のデメリット
- 外壁の汚れや劣化が目立つ
- 「購入後すぐに多額の修繕費用が必要」と敬遠される
- 一時金徴収が決まっている場合、大きなマイナス要因に
価格差の実例
名古屋市千種区の築25年マンション(70㎡3LDK)の場合:
- 修繕前の成約価格:2,100万円
- 修繕後(半年後)の成約価格:2,350万円
- 価格差:約250万円
ただし、修繕費用として1戸あたり120万円が徴収されているため、売主の手取りでは修繕前の方が有利だったケースです。
修繕前に売るか、修繕後に売るか
判断のポイントは以下の通りです。
修繕前に売るべきケース
- 外観の劣化がそれほど目立たない
- 修繕費用が高額(1戸あたり100万円以上)
- 修繕後の価格上昇が修繕費用を下回ると予想される
- 一時金徴収が決定している
修繕後に売るべきケース
- 外観の劣化が著しく、現状では売却困難
- 修繕費用が比較的低額(1戸あたり70万円以下)
- 修繕後の価格上昇が修繕費用を上回ると予想される
- 修繕積立金から全額賄える(持ち出しなし)
修繕直前期は最も不利
修繕工事の着工が決定してから完了までの期間(通常3〜6ヶ月)は、最も売却が難しい時期です。
工事中は足場が組まれ、外観が見えず、騒音や振動もあります。この時期に売り出すと、大幅な値引きを求められることがあります。
大規模修繕の計画が発表されたら、「着工前に売却を完了させる」か「完了後まで待つ」かの二択で考えましょう。
名古屋の実例:築22年→25年の価格差
実際の事例から、売却タイミングの重要性を学びましょう。
事例①:天白区・築22年で売却し高値で成約
Gさん(50代・会社員)の事例
天白区の分譲マンション(築22年、75㎡3LDK)を所有していたGさん。子どもの独立を機に、戸建てへの住み替えを検討し始めました。
売却時の状況
- 購入価格:3,200万円(新築時)
- 築年数:22年
- 管理状態:良好(修繕積立金も計画通り)
- 大規模修繕:2年前に実施済み
- 駅からの距離:徒歩8分
売却活動
2023年4月に売却活動を開始。大規模修繕が完了して間もなく、外観も綺麗で内覧者の反応も良好でした。
売り出し価格:2,450万円 売却期間:2ヶ月 成約価格:2,400万円
手取り計算
- 売却価格:2,400万円
- 仲介手数料等:約85万円
- ローン完済:800万円(残債)
- 手取り額:約1,515万円
この資金を元に、郊外の戸建てを購入し、住み替えに成功しました。
成功のポイント
大規模修繕完了から2年という、外観が綺麗で次回修繕までの期間も長いベストタイミングでの売却でした。また、天白区は名古屋市内でもファミリー層に人気のエリアであり、適正価格での売却がスムーズに進みました。
事例②:守山区・築25年で売却し苦戦
Hさん(60代・自営業)の事例
守山区の分譲マンション(築25年、70㎡3LDK)を所有していたHさん。実家の相続を機に、実家に住むためマンションの売却を決断しました。
売却時の状況
- 購入価格:2,800万円(新築時)
- 築年数:25年
- 管理状態:やや不良(修繕積立金が不足気味)
- 大規模修繕:次回修繕(築26年予定)の一時金徴収が決定
- 駅からの距離:徒歩12分
売却の課題
総会で、1年後の大規模修繕に向けて1戸あたり80万円の一時金徴収が決定していました。この情報は重要事項説明で買主に伝える必要があり、大きなマイナス要因となりました。
また、築25年という築年数は、住宅ローン控除が使えない境界線(築25年超)に近く、買い手がローン控除を重視する場合は敬遠されがちです。
売却活動
2024年1月に売却活動を開始。
当初売り出し価格:1,850万円 内覧数:3ヶ月で8組 値下げ後価格:1,700万円 売却期間:5ヶ月 成約価格:1,650万円
手取り計算
- 売却価格:1,650万円
- 仲介手数料等:約60万円
- ローン完済:完済済み
- 一時金の返還:80万円(買主負担になったため不要)
- 手取り額:約1,590万円
当初の希望との差
- 希望価格:1,850万円
- 実際の成約:1,650万円
- 差額:−200万円
反省点
Hさんは「あと2〜3年したら考えよう」と思っているうちに、修繕一時金の話が具体化してしまいました。
もし築22〜23年の時点で売却していれば、以下の条件でより有利に売却できた可能性があります:
- 一時金徴収前で買い手の懸念が少ない
- 築25年の壁(ローン控除)を超える前
- 予想価格:1,900万円前後
機会損失の計算
- 実際の成約:1,650万円
- 2年前の想定価格:1,900万円
- 機会損失:約250万円
- 2年間の管理費等:約60万円
- 合計損失:約310万円
Hさんのケースは、「まだ大丈夫」という判断の先延ばしが、結果的に大きな損失を生んだ典型例です。
2つの事例から学ぶ教訓
タイミングの重要性
わずか3年の差が、200〜300万円の価格差を生みました。築古マンションでは、「あと数年」という感覚が大きな機会損失につながります。
大規模修繕との関係
修繕完了から2〜3年以内が売却の好機です。次回修繕の一時金徴収が決定する前に行動することが重要です。
管理状態の差
同じ築年数でも、管理組合の運営状況によって売却価格と売却期間に大きな差が生まれます。自分のマンションの管理状態を客観的に評価しましょう。
まとめ:築古マンションの売り時は「築20年前後」がベスト
築古マンションの売却で損をしないためのポイントをまとめます。
最適な売却時期
- 大規模修繕完了から2〜5年以内
- 次回修繕の一時金徴収が決定する前
- 築25年(住宅ローン控除の境界)を超える前
- 修繕積立金の大幅値上げが決定する前
今すぐ確認すべきこと
- 長期修繕計画と次回修繕の時期
- 修繕積立金の残高と今後の値上げ予定
- 管理組合の総会議事録(一時金徴収の議論)
- 現在の市場価格(複数社に査定依頼)
売却を急ぐべきサイン
- 修繕積立金が著しく不足している
- 空室率が高く、管理組合の運営が機能していない
- 周辺環境の悪化(治安、騒音など)
- 大規模修繕の一時金徴収が議題に上がっている
売却を待つべきケース
- 大規模修繕が完了したばかり(1年以内)
- 名古屋駅周辺など再開発で価格上昇が見込めるエリア
- 管理状態が良好で、価格下落リスクが低い
築古マンションの価値は、時間の経過とともに確実に減少します。「いつか売ろう」ではなく、「いつ売るか」を明確に決めて行動することが、損をしないための鉄則です。
定期的に査定を受け、管理組合の動向に注意を払いながら、最適なタイミングを見極めましょう。
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監修者情報

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代表取締役 山内 章寛
