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転勤・住み替えで不動産を"売るか貸すか"迷ったら|名古屋での判断基準

「急な転勤が決まったけど、家はどうしよう」「数年で戻ってくるかもしれないし、売るのはもったいない気がする…」——転勤や住み替えを控えた方の多くが、このような悩みを抱えています。

持ち家を「売却」するか「賃貸」に出すか。この判断は、単なる感情論ではなく、資金効率、税制、リスク管理の観点から冷静に比較する必要があります。一見、賃貸の方が有利に見えても、実際には想定外のコストやリスクが潜んでいることも少なくありません。

この記事では、名古屋市の賃貸相場と実例をもとに、「売るか貸すか」を判断するための具体的な基準を解説します。あなたの状況に合った最適な選択を見つけましょう。

売却・賃貸それぞれのメリットデメリット

まず、売却と賃貸の特徴を整理しましょう。

売却のメリット

1. まとまった資金が手に入る

売却すれば、ローン返済後の手取り額が一度に現金化されます。この資金を転勤先での生活費、新居の購入、老後資金などに充てることができます。

名古屋市内の3,000万円程度のマンションであれば、ローン完済後に数百万〜1,000万円以上の手取りが得られるケースも多くあります。

2. 維持コストがゼロになる

売却すれば、固定資産税、管理費、修繕積立金、火災保険料などの維持コストから完全に解放されます。戸建ての場合は、庭の管理や建物の劣化対策も不要になります。

3. 管理の手間がない

賃貸経営には、入居者対応、設備トラブル、契約更新など、様々な管理業務が発生します。売却すればこれらの手間から解放され、本業や転勤先での生活に集中できます。

4. 資産価値下落リスクを回避

不動産は時間の経過とともに価値が下がります。売却すれば、この下落リスクを負う必要がなくなります。

5. シンプルな税務処理

賃貸経営には確定申告が必須で、減価償却や経費計上など複雑な処理が必要です。売却なら、譲渡所得税の申告のみで済みます。

売却のデメリット

1. 将来戻れない

売却後に「やはりあの家に住みたい」と思っても、戻ることはできません。思い入れのある家を手放す心理的な抵抗もあるでしょう。

2. 譲渡所得税が発生する可能性

購入価格よりも高く売れた場合、譲渡所得税が課税されます。ただし、マイホームの売却には3,000万円の特別控除があるため、多くのケースでは非課税です。

3. 市場価格が低迷している場合の損失

購入時よりも不動産市況が悪化している場合、売却価格が購入価格を下回り、損失が確定します。

賃貸のメリット

1. 家賃収入が得られる

毎月安定した家賃収入が入ります。ローン返済が残っている場合、家賃でローンを賄えれば実質的な負担がなくなります。

2. 将来戻る選択肢が残る

定期借家契約を結べば、契約期間満了後に自分が戻って住むことも可能です。

3. 資産を保有し続けられる

不動産という資産を保有し続けることで、将来的な価格上昇の恩恵を受けられる可能性があります。

4. 住宅ローン控除が継続できる場合がある

一定の条件を満たせば、賃貸に出しても住宅ローン控除が継続できるケースがあります(再入居の見込みがあるなど)。

賃貸のデメリット

1. 空室リスク

入居者が見つからない期間は家賃収入がゼロですが、ローンや管理費は支払い続ける必要があります。

名古屋市内でも、郊外エリアや駅から遠い物件では空室期間が長期化するリスクがあります。

2. 維持コストの継続

固定資産税、管理費、修繕積立金、火災保険料などは継続して支払う必要があります。戸建ての場合、外壁塗装や設備修理など、突発的な出費も発生します。

3. 入居者トラブルのリスク

家賃滞納、近隣トラブル、室内の破損など、入居者関連のトラブルに対応しなければなりません。遠方にいる場合、対応が困難になることもあります。

4. 資産価値の下落

賃貸に出している間も建物は老朽化し、資産価値は下落します。将来売却する際、現在よりも価格が下がっている可能性があります。

5. 確定申告の義務

賃貸収入がある場合、毎年確定申告が必要です。税理士に依頼すれば費用がかかり、自分で行えば手間がかかります。

6. 入居者がいると売却しにくい

賃貸中の物件(オーナーチェンジ物件)は、自己居住用として購入したい買い手には敬遠され、売却価格も低くなりがちです。

家賃相場・維持費・空室リスク

賃貸を選択する場合、収支をシミュレーションすることが重要です。
名古屋市内の家賃相場
エリア別の家賃相場を把握しましょう。
都心部(中区・中村区)

3LDK(70㎡):15〜20万円
2LDK(60㎡):12〜18万円
賃貸需要:高(単身赴任者、DINKSに人気)

準都心部(千種区・昭和区・瑞穂区)

3LDK(70㎡):12〜16万円
2LDK(60㎡):10〜14万円
賃貸需要:高(ファミリー層に人気)

郊外部(守山区・緑区・天白区)

3LDK(70㎡):8〜12万円
2LDK(60㎡):7〜10万円
賃貸需要:中(駅近は健闘、駅遠は厳しい)

注意点
希望家賃で必ず借り手がつくとは限りません。相場より高めに設定すると空室期間が長期化し、結果的に収益が下がります。
また、築年数や設備の状態によって、相場よりも低い賃料しか設定できない場合もあります。
賃貸経営にかかる維持費
家賃収入がそのまま利益になるわけではありません。様々な経費が発生します。
月次・年次で発生する固定費

管理費・修繕積立金(マンションの場合):月2〜4万円
固定資産税・都市計画税:年間10〜25万円(月換算で約1〜2万円)
火災保険料:年間1〜3万円
賃貸管理委託料(管理会社に委託する場合):家賃の5〜10%

不定期に発生する変動費

設備修理・交換費:エアコン、給湯器、水回りなど(1回10〜50万円)
入居者募集費用:広告料、仲介手数料(家賃の1〜2ヶ月分)
原状回復費用:退去時のクリーニング、修繕(5〜20万円)
リフォーム費用(空室が長引く場合):壁紙、床の張替えなど(20〜100万円)

収支シミュレーション例
名古屋市天白区のマンション(3LDK、70㎡、築15年)を想定:
収入

想定家賃:月12万円
年間家賃収入:144万円

支出

管理費・修繕積立金:月3万円 = 36万円/年
固定資産税:15万円/年
火災保険料:2万円/年
賃貸管理委託料:14.4万円/年(家賃の10%)
設備修理積立:10万円/年(平均)
年間支出合計:約77万円

実質収益

144万円 − 77万円 = 67万円/年(月約5.6万円)

ローン返済が月8万円残っている場合、毎月2.4万円の持ち出しが発生します。
空室リスクと対策
賃貸経営で最も大きなリスクが空室です。
名古屋市内の空室リスク
エリアや物件条件によって、空室リスクは大きく異なります。
空室リスクが低い物件

名古屋駅・栄から徒歩圏内
地下鉄駅徒歩5分以内
千種区・昭和区などの人気学区
築浅または適切にメンテナンスされている
周辺に大学や大企業がある

空室リスクが高い物件

駅から徒歩15分以上
築30年以上で設備が古い
周辺に新築物件が多数供給されている
郊外の人口減少エリア
1階(女性に敬遠される)

空室期間の想定
一般的に、入居者の入れ替わりは2〜3年に1回程度です。その際、次の入居者が決まるまでに1〜3ヶ月程度かかります。
つまり、年間の稼働率は95%程度と見積もるのが現実的です。満室を前提とした収支計画は危険です。
空室対策

適正な家賃設定:相場より高すぎない
設備のアップデート:インターネット無料、宅配ボックスなど
定期借家契約の活用:期間を限定して貸し出す
サブリース(家賃保証):空室時も賃料が保証される(ただし手数料が高い)

売却タイミングの判断基準

「売るか貸すか」を判断する際の具体的な基準を示します。

売却を選ぶべき7つのケース

1. 転勤期間が5年以上、または戻る予定が不明確

長期間の転勤や、戻る予定が立っていない場合は売却が有利です。賃貸経営を続けるほど建物は老朽化し、将来の売却価格も下がります。

2. ローン残債が多い

家賃収入でローンを賄えない場合、毎月持ち出しが発生します。これが5年、10年と続けば数百万円の負担になります。

3. 賃貸需要が見込めないエリア

駅から遠い、人気のないエリアなど、賃貸需要が低い場合は空室リスクが高くなります。無理に賃貸に出すより、売却した方が得策です。

4. 築年数が古い(築25年以上)

築古物件は賃貸需要が限定的です。また、設備トラブルも増え、維持費がかさみます。資産価値が残っているうちに売却する方が有利です。

5. 戸建てを所有している

戸建ては管理の手間が大きく(庭の手入れ、外壁のメンテナンスなど)、遠方から管理するのは困難です。マンションに比べて賃貸経営のハードルが高いと言えます。

6. まとまった資金が必要

転勤先での生活資金、新居の購入資金、子どもの教育費など、まとまった資金が必要な場合は売却を優先すべきです。

7. 不動産市況が良好

現在の市場価格が購入時より上昇している場合、今が売却の好機です。市況は常に変動するため、良いタイミングを逃さないことが重要です。

賃貸を選ぶべき5つのケース

1. 転勤期間が2〜3年と明確で、必ず戻る予定がある

短期間で戻る予定が確実な場合、定期借家契約で貸し出すのが合理的です。売却・再購入のコストを考えると、賃貸の方が有利になります。

2. 家賃収入でローンと維持費を十分に賄える

家賃収入が月15万円、ローン返済と維持費の合計が月12万円なら、月3万円のプラスになります。この場合は賃貸経営が成り立ちます。

3. 賃貸需要が高いエリア・物件

都心部、駅近、人気学区など、空室リスクが低い物件は賃貸経営に向いています。

4. 今売却すると損失が確定する

購入価格よりも現在の市場価格が大幅に下落している場合、損失を確定させるよりも賃貸で保有し、市況回復を待つのも選択肢です。

ただし、さらなる下落リスクもあるため、慎重な判断が必要です。

5. 将来的な価格上昇が期待できる

リニア開業や再開発など、明確な価格上昇要因がある場合、資産として保有し続けるメリットがあります。

名古屋駅周辺や栄などは、2027年のリニア開業に向けて価格上昇が期待されています。

判断シート:5つの質問

以下の質問に答えて、自分に合った選択を見極めましょう。

Q1. 転勤期間は何年ですか?

  • 2〜3年以内:賃貸寄り
  • 4年以上または不明:売却寄り

Q2. 家賃収入とローン・維持費のバランスは?

  • 家賃収入 > ローン+維持費:賃貸寄り
  • 家賃収入 < ローン+維持費:売却寄り

Q3. 物件の立地・賃貸需要は?

  • 都心部・駅近:賃貸寄り
  • 郊外・駅遠:売却寄り

Q4. 現在の市場価格は?

  • 購入価格以上:売却寄り
  • 購入価格を大きく下回る:賃貸寄り(ただし要検討)

Q5. 管理の手間を負えますか?

  • 家族が現地にいる、または管理会社に任せられる:賃貸寄り
  • 誰も管理できない:売却寄り

5つの質問のうち、「売却寄り」が3つ以上なら売却、「賃貸寄り」が3つ以上なら賃貸を検討すべきです。

実例:名東区で売却決断し資金効率改善

実際の事例から、判断のポイントを学びましょう。

Iさん(40代・会社員)の事例

名東区のマンション(3LDK、75㎡、築10年)を所有していたIさんは、東京への転勤が決まりました。

当初の状況

  • 購入価格:3,500万円(築5年時に中古購入)
  • ローン残債:2,400万円
  • 転勤期間:5年程度(延長の可能性あり)
  • 家族構成:妻・子ども2人(妻子は名古屋に残る予定)

当初の計画:賃貸に出す

Iさんは当初、「いずれ戻るかもしれないし、家賃収入も得られる」と考え、賃貸に出すことを検討していました。

賃貸の収支シミュレーション

  • 想定家賃:月13万円
  • ローン返済:月8万円
  • 管理費・修繕積立金:月3万円
  • その他維持費:月1.5万円(固定資産税、保険等)
  • 月次収支:+0.5万円

一見、プラスに見えますが、以下のリスクがありました:

  • 空室期間の収入ゼロ(1〜2ヶ月/2〜3年)
  • 設備故障時の修理費用
  • 賃貸管理委託料(家賃の10%)を含めると実質マイナス

売却への方針転換

不動産会社に相談したところ、以下のアドバイスを受けました:

  1. 名東区の中古マンション市場は活発で、高値売却が期待できる
  2. 転勤期間が不明確で、賃貸経営のリスクが大きい
  3. 売却資金で東京の賃貸生活を充実させられる
  4. 妻子は名古屋に残るため、より条件の良い賃貸マンションに住み替えられる

Iさんは検討の結果、売却を決断しました。

売却の結果

売り出し価格:3,480万円 売却期間:2ヶ月 成約価格:3,400万円

手取り計算

  • 売却価格:3,400万円
  • ローン完済:2,400万円
  • 仲介手数料等:約115万円
  • 手取り額:約885万円

資金の活用

手取り885万円を以下のように活用しました:

  1. 東京での生活費:月15万円 × 5年 = 900万円分を確保
  2. 妻子の新居:名東区内のより広い賃貸マンション(月12万円)に住み替え
  3. 子どもの教育費:一部を教育資金として確保

売却のメリット

  1. 資金効率の改善:賃貸経営で得られる収益(月0.5〜1万円程度)よりも、まとまった資金を得て生活の質を高められた
  2. リスクからの解放:空室、入居者トラブル、突発的な修理費用の心配が不要に
  3. 管理の手間ゼロ:遠方からの管理ストレスがなくなった
  4. 家族の生活環境改善:妻子がより条件の良い住居に住み替えられた

もし賃貸を選んでいたら

5年間の賃貸経営を想定:

  • 家賃収入:13万円 × 12ヶ月 × 5年 = 780万円
  • 維持費等:12.5万円 × 12ヶ月 × 5年 = 750万円
  • 実質収益:約30万円(空室リスク、突発修理を除く)

これに対し、売却による手取り885万円は、はるかに大きな資金効率を実現しています。

Iさんの振り返りコメント

「最初は『賃貸に出せば家賃収入が入る』と単純に考えていましたが、実際には様々なリスクとコストがあることがわかりました。売却して本当に良かったです。家族の生活も改善し、東京での単身赴任生活も余裕を持って送れています。」

成功のポイント

  1. 早期の専門家相談:不動産会社に相談し、客観的な判断材料を得た
  2. 収支の精緻なシミュレーション:楽観的な想定ではなく、リスクを織り込んだ計算
  3. 転勤期間の不確実性を考慮:5年で終わるとは限らないリスクを認識
  4. 市況の好機を逃さず:名東区の市場が活発なタイミングで売却
  5. 家族全体の幸福を優先:収益だけでなく、生活の質向上を重視

 

まとめ:迷ったら「売却」が無難、賃貸は条件が整った時のみ

転勤・住み替え時の「売るか貸すか」判断のポイントをまとめます。

売却を推奨するケース(該当項目が多いほど売却が有利)

  • □ 転勤期間が4年以上、または不明確
  • □ ローン残債が多く、家賃収入で賄えない
  • □ 駅から遠い、賃貸需要が低いエリア
  • □ 築20年以上の物件
  • □ 戸建て(管理の手間が大きい)
  • □ まとまった資金が必要
  • □ 現在の市場価格が良好
  • □ 管理を任せられる人が近くにいない

賃貸を検討できるケース(すべて該当する場合のみ)

  • □ 転勤期間が2〜3年で明確
  • □ 必ず戻る予定がある
  • □ 家賃収入でローンと維持費を十分に賄える
  • □ 都心部・駅近など賃貸需要が高い
  • □ マンション(管理がしやすい)
  • □ 築15年以内で設備が良好
  • □ 管理会社に任せられる、または家族が近くにいる

迷ったら売却が無難

賃貸経営は想像以上に手間とリスクが伴います。「家賃収入が入る」という表面的なメリットだけで判断せず、空室リスク、維持費、管理の手間、資産価値の下落などを総合的に考慮しましょう。

多くのケースでは、売却してまとまった資金を得た方が、資金効率と精神的な安定の両面で有利です。

次のアクションステップ

  1. 不動産会社に査定を依頼(現在の市場価格を把握)
  2. ローン残高を確認(金融機関に問い合わせ)
  3. 賃貸の場合の収支をシミュレーション(楽観的すぎない想定で)
  4. 専門家(不動産会社、ファイナンシャルプランナー)に相談
  5. 家族と話し合い、総合的に判断

転勤は突然決まることが多く、慌てて判断しがちです。しかし、数百万円、場合によっては1,000万円以上の差が生まれる重要な決断です。

冷静に情報を集め、自分と家族にとって最適な選択をしてください。


 

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