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地価が下がり始めたエリアで"慌てて売らない"ための戦略|名古屋市内の地価動向

「近所の家が全然売れていない…」「地価が下がっているって聞いたけど、今すぐ売った方がいいのかな」——地価下落のニュースを耳にすると、多くの不動産所有者が不安を感じます。
地価が下がり始めたエリアでは、焦って売却すると相場よりも安値で手放すことになりかねません。しかし一方で、「様子を見よう」と判断を先延ばしにすると、さらに価格が下落するリスクもあります。
重要なのは、地価下落の「初期兆候」を正しく見極め、冷静に対応することです。すべての地価下落が危機的状況につながるわけではありません。一時的な調整なのか、長期的な下落トレンドなのかを判断することが、損をしない売却の鍵となります。
この記事では、名古屋市内のエリア別地価動向をもとに、地価下落時に慌てず対応するための戦略を解説します。
地価下落の初期兆候を見極める方法
地価下落には、必ず前兆があります。早期に気づくことで、適切な対応が可能になります。
注意すべき7つのサイン
1. 近隣の売り物件が増加している
同じマンション内や近隣で、売り出し物件が目立って増えてきたら要注意です。特に、長期間売れ残っている物件が複数ある場合、エリア全体の需要が低下している可能性があります。
不動産ポータルサイトで自分のエリアの売り出し物件数を定期的にチェックしましょう。3ヶ月前と比べて20%以上増加していたら、供給過多の兆候です。
2. 売り出し価格が徐々に下がっている
同じ物件が何度も価格を下げて再掲載されている、または新規売り出し物件の価格が以前より明らかに低い場合、相場が下落している証拠です。
名古屋市内でも、築年数や広さが似た物件の価格推移を追うことで、相場の変化を把握できます。
3. 成約までの期間が長期化
以前は1〜2ヶ月で売れていた物件が、3〜6ヶ月経っても売れない状況が続いている場合、買い手の需要が減少しています。
不動産会社に問い合わせて、そのエリアの平均販売期間を確認しましょう。平均が3ヶ月を超えている場合は、市場が冷え込んでいる可能性があります。
4. 空き家・空き地が目立ち始める
近隣に空き家や空き地が増えてきたら、人口流出や高齢化が進んでいる兆候です。特に戸建て住宅地では、この傾向が顕著に現れます。
名古屋市の郊外エリアでは、第一世代が高齢化し、子世代が戻ってこないことで空き家が増加している地域があります。
5. 周辺環境の悪化
商店街のシャッター通り化、スーパーや病院の撤退、治安の悪化など、生活利便性が低下すると地価にも影響します。
また、近隣に嫌悪施設(廃棄物処理施設、墓地など)が建設される計画がある場合も、地価下落の要因になります。
6. 公示地価・基準地価の継続的な下落
国土交通省が毎年発表する公示地価、都道府県が発表する基準地価を確認しましょう。自分の物件に近い地点で2〜3年連続して下落している場合、トレンドとして捉える必要があります。
名古屋市のデータは、市のウェブサイトや国土交通省の「土地総合情報システム」で確認できます。
7. 金融機関の融資姿勢が厳しくなる
特定のエリアで、住宅ローンの審査が厳しくなったり、担保評価額が低く算定されるようになった場合、金融機関がそのエリアのリスクを警戒している証拠です。
買い手がローンを組みにくくなるため、必然的に取引が減少し、価格も下落します。
一時的な調整か、長期的な下落か
すべての地価下落が深刻なわけではありません。見極めのポイントを押さえましょう。
一時的な調整の特徴
- 金利上昇などマクロ経済の影響による一時的な買い控え
- 大量供給(大規模分譲など)による一時的な需給バランスの崩れ
- 近隣エリア全体で同様の傾向が見られ、名古屋市全体の動向と連動
- 下落率が年間5%以内の緩やかなもの
- 基本的な立地条件(駅距離、生活利便性)は良好
長期的な下落トレンドの特徴
- 人口減少や高齢化などエリア固有の構造的問題
- 3年以上連続して下落が続いている
- 周辺エリアは横ばいなのに、特定エリアのみ下落
- 年間10%以上の急激な下落
- 空き家率の上昇、インフラの老朽化など複合的な問題
一時的な調整であれば、慌てて売る必要はありません。むしろ市場の回復を待った方が有利です。
長期的な下落トレンドの場合は、早めの対応を検討すべきですが、それでも「今すぐ安値で売る」のではなく、戦略的な対応が必要です。
情報収集の方法
正確な情報に基づいて判断するため、以下の情報源を活用しましょう。
1. 国土交通省「土地総合情報システム」 実際の取引価格、公示地価、基準地価などが確認できます。
2. 不動産ポータルサイト SUUMO、ホームズなどで、近隣の売り出し状況や価格推移をチェック。
3. 名古屋市の統計データ 人口動態、世帯数の推移、地域別の高齢化率などが公開されています。
4. 複数の不動産会社への査定依頼 3社以上に査定を依頼し、相場観と市場環境について意見を聞きましょう。
5. 地域の不動産会社からの情報 地元で長年営業している不動産会社は、エリアの詳しい動向を把握しています。
名古屋市内のエリア別地価動向(守山・緑・港)
名古屋市内でも、地価の動きはエリアによって大きく異なります。郊外の代表的な3区の動向を見てみましょう。
守山区の地価動向
全体的な傾向
守山区は名古屋市の北東部に位置し、昭和40〜50年代に開発された住宅地が多いエリアです。
近年の地価は、駅近エリアと駅遠エリアで二極化が進んでいます。
上昇・横ばいエリア
- JR中央線・名鉄瀬戸線の駅徒歩10分以内:横ばいから微増
- 新守山駅、小幡駅周辺:利便性が高く安定
- 大型商業施設周辺:イオン守山店など
下落エリア
- 駅から徒歩20分以上の住宅地:年間2〜5%程度の下落
- 築40年以上の古い分譲住宅地:高齢化と空き家増加で下落
- 瀬戸方面の郊外部:人口減少エリア
守山区の課題
- 第一世代の高齢化:開発時に入居した世代が80代以上に
- 子世代の流出:利便性の高いエリアへの転出
- 公共交通の不便さ:駅から遠いエリアは車が必須
- 学校の統廃合:少子化による小学校の統合
今後の見通し
駅近エリアは底堅く推移する見込みですが、駅遠の古い分譲地では今後も緩やかな下落が続く可能性があります。
ただし、守山区全体が急激に下落するわけではなく、立地条件によって差が開く「二極化」が進行しています。
緑区の地価動向
全体的な傾向
緑区は名古屋市の南東部に位置し、比較的新しい開発が多いエリアです。守山区に比べて築浅物件が多く、ファミリー層の流入も見られます。
上昇・横ばいエリア
- 地下鉄桜通線沿線(徳重、神沢など):横ばいから微増
- 有松駅周辺:名古屋市の東の玄関口として安定
- 大型ショッピングセンター周辺:イオンモール大高など
下落エリア
- 鳴海町・大高町の一部:旧来からの住宅地で高齢化
- 駅から遠い丘陵地の分譲地:車必須のエリア
- 緑区南部の旧農村地域:人口減少傾向
緑区の特徴
- 比較的若い世代が多い:子育て世代の流入
- 新築供給が活発:中古物件は新築との競合に
- 地下鉄延伸の効果:桜通線延伸で利便性向上
- 商業施設の充実:生活利便性は比較的高い
今後の見通し
地下鉄沿線は当面安定が見込まれますが、駅から遠いエリアや新築競合が激しいエリアでは、中古物件の価格が伸び悩む可能性があります。
ただし、守山区に比べると全体的に下落リスクは低めと言えます。
港区の地価動向
全体的な傾向
港区は名古屋市の南西部に位置し、工業地帯と住宅地が混在するエリアです。名古屋市16区の中でも地価の変動が大きく、エリアごとの差が顕著です。
上昇・横ばいエリア
- あおなみ線沿線の一部:稲永駅、野跡駅周辺
- 港北地区:比較的新しい住宅地
- レゴランド周辺:再開発期待エリア
下落エリア
- 港南地区の一部:古い公営住宅や老朽化した住宅地
- 工場に近い住宅地:環境面での懸念
- 木曽川より南の地域:海抜が低く水害リスクが意識される
港区の課題
- 水害リスクの認識拡大:近年の豪雨で意識が高まる
- 工業地帯のイメージ:住環境としての評価が低い
- 公共交通の不便さ:地下鉄が通っていない
- 商業施設の不足:生活利便性で他区に劣る
今後の見通し
港区は名古屋市内でも地価下落リスクが比較的高いエリアです。ただし、名古屋港周辺の再開発や、リニア開業に伴う物流拠点としての価値向上など、長期的なポテンシャルもあります。
現時点で港区の物件を所有している場合、慎重な判断が必要です。
3区の比較まとめ
| エリア | 下落リスク | 今後の見通し | 対応の優先度 |
|---|---|---|---|
| 守山区(駅近) | 低 | 安定 | 低 |
| 守山区(駅遠) | 中〜高 | 緩やかな下落 | 中〜高 |
| 緑区(地下鉄沿線) | 低 | 安定〜微増 | 低 |
| 緑区(駅遠) | 中 | 横ばい〜微減 | 中 |
| 港区(再開発周辺) | 中 | 不透明 | 中 |
| 港区(その他) | 高 | 下落継続の可能性 | 高 |
売り急ぎで損をするケース
地価下落を恐れて慌てて売却すると、かえって損をすることがあります。
パニック売りの典型パターン
ケース1:相場を大きく下回る価格で売却
「早く売らないとさらに下がる」という焦りから、不動産会社の言いなりで相場より20〜30%も安い価格で売却してしまうケース。
例:相場2,500万円の物件を、「今なら買い手がいます」という営業トークに乗せられて1,900万円で売却。半年後、近隣の類似物件が2,400万円で成約していたことを知る。
ケース2:買取業者に安値で売却
「すぐに現金化できます」という買取業者の提案に飛びつき、市場価格の70%程度で売却してしまうケース。
買取は確かに早いですが、その分価格が大幅に下がります。本当に急ぐ必要があるのか、冷静に考えましょう。
ケース3:繁忙期を逃して売却
焦って夏や冬に売り出し、買い手が少ない時期に安値で売却してしまうケース。
不動産には需要が高まる時期(1〜3月)があります。この時期を狙えば、より高値で売却できる可能性があります。
損をしないための3原則
原則1:複数社の査定を必ず取る
1社の査定だけで判断せず、最低3社以上から査定を取りましょう。価格にばらつきがある場合、その理由を聞いて理解することが重要です。
極端に高い査定も、極端に低い査定も要注意です。適正な相場感を持つことが、冷静な判断につながります。
原則2:市場に出す前に適正価格を見極める
売り出し価格は、「希望価格」ではなく「市場で受け入れられる価格」に設定すべきです。
高すぎる価格で長期間売れ残ると、「売れ残り物件」というイメージがつき、さらに売却が難しくなります。
最初から適正価格で出す方が、結果的に高値で早く売れます。
原則3:期限を決めて、段階的に対応
「3ヶ月間は当初価格で様子を見る」「反応が悪ければ5%値下げ」など、事前に計画を立てておきましょう。
焦って判断するのではなく、市場の反応を見ながら戦略的に対応することが重要です。
慌てず売るための価格戦略と情報収集法
地価下落エリアでも、戦略次第で損を最小限に抑えられます。
適正価格の設定方法
ステップ1:相場の把握
まず、自分の物件の現在の相場を正確に把握しましょう。
- 不動産ポータルサイトで類似物件の売り出し価格を確認
- 国土交通省の「土地総合情報システム」で実際の成約価格を確認
- 複数の不動産会社に査定を依頼(3社以上)
これらの情報を総合して、「現実的な成約価格帯」を見極めます。
ステップ2:物件の強みと弱みの整理
自分の物件の特徴を客観的に評価しましょう。
強み
- 駅からの距離
- 周辺環境(学校、商業施設、公園など)
- 日当たり、眺望
- リフォーム履歴
- 管理状態(マンションの場合)
弱み
- 築年数
- 設備の古さ
- 周辺の騒音、臭気
- 駐車場の有無や条件
- エレベーターなし(マンション上階の場合)
強みが多ければ相場の上限に、弱みが多ければ相場の下限に価格を設定します。
ステップ3:戦略的な価格設定
地価下落エリアでは、以下の価格戦略が有効です。
戦略A:相場の中央値で早期売却を狙う
相場が2,000〜2,400万円なら、2,200万円程度で設定。問い合わせが多ければ、値下げせずに売却できる可能性が高まります。
戦略B:相場上限からスタートし、段階的に値下げ
相場が2,000〜2,400万円なら、2,400万円からスタート。1ヶ月ごとに5%ずつ値下げ。
この方法は時間がかかりますが、運が良ければ高値で売れる可能性があります。
戦略C:相場よりやや安めで確実性を重視
相場が2,000〜2,400万円なら、2,100万円で設定。競合物件より魅力的な価格で、早期成約を狙います。
地価下落が進行しているエリアでは、戦略Aまたは戦略Cが推奨されます。
物件の魅力を高める工夫
価格だけでなく、物件の見せ方も重要です。
費用をかけずにできる工夫
- 徹底的な清掃:特に水回り、玄関、窓は念入りに
- 整理整頓:余計なものを片付け、広く見せる
- 消臭対策:ペット臭、タバコ臭は大きなマイナス要因
- 照明の改善:明るい雰囲気にするだけで印象が変わる
- 庭や駐車場の手入れ:第一印象が重要
少額の投資で効果的な対策
- ハウスクリーニング:5〜10万円で見違える
- 壁紙の部分張替え:目立つ汚れだけでも張り替える
- 水栓金具の交換:古びた水栓を新品に(数千円〜2万円)
- 照明器具の更新:LED照明で明るく清潔感を(1〜3万円)
これらの小さな投資が、数十万円の価格差を生むことがあります。
売却時期の選択
地価下落エリアでも、売却時期によって結果が変わります。
有利な時期
- 1〜3月:転勤・入学シーズンで需要が最も高い
- 9〜10月:秋の転勤シーズンで需要が高まる
不利な時期
- 7〜8月:夏休みで住み替えニーズが少ない
- 12月:年末で動きが鈍い
可能であれば、需要の高い時期に合わせて売却活動を開始しましょう。
時期選択の注意点
ただし、地価下落が急速に進行している場合、「繁忙期を待つ」ことで数ヶ月の間にさらに相場が下がるリスクもあります。
下落ペースと繁忙期の効果を比較して判断しましょう。
不動産会社の選び方
地価下落エリアでは、不動産会社選びが特に重要です。
避けるべき不動産会社
- 極端に低い査定額を提示し、不安を煽る
- 「すぐに売らないと大変なことになる」と脅す
- 一般媒介を嫌がり、専任媒介を強く勧める
- 具体的な販売戦略を説明しない
選ぶべき不動産会社
- そのエリアでの取引実績が豊富
- 相場を冷静に分析し、根拠を示して説明
- 売却活動の具体的なプランを提示
- デメリットも含めて正直に話す
- 無理に専任媒介を勧めない
地価下落エリアでこそ、経験豊富で誠実な不動産会社を選ぶことが成功の鍵です。
まとめ:冷静な情報収集と戦略的な対応が損を防ぐ
地価が下がり始めたエリアで損をしないためのポイントをまとめます。
地価下落の初期兆候(7つのサイン)
- 近隣の売り物件増加
- 売り出し価格の継続的な下落
- 成約までの期間長期化
- 空き家・空き地の増加
- 周辺環境の悪化
- 公示地価の継続的な下落
- 金融機関の融資姿勢が厳しくなる
やるべきこと
- 複数の情報源から正確な情報を収集
- 一時的な調整か長期的な下落かを見極める
- 3社以上の不動産会社に査定を依頼
- 適正価格を把握し、戦略的に価格設定
- 物件の魅力を高める工夫(清掃、小規模改修)
- 需要の高い時期を狙う(可能であれば)
やってはいけないこと
- 1社の査定だけで判断する
- 不安を煽る営業トークに乗せられる
- 相場を大きく下回る価格で売却する
- 買取業者に安易に売却する
- 何も対策せず、ただ時間が過ぎるのを待つ
エリア別の対応優先度
- 守山区(駅遠)、港区:下落リスクが高いため、早めに対策を検討
- 守山区(駅近)、緑区(地下鉄沿線):慌てる必要はないが、定期的に市況をチェック
- 都心部・人気エリア:地価下落のリスクは低く、適正価格での売却を目指す
地価下落は確かに不安ですが、パニックに陥って不利な判断をすることが最大の損失につながります。
正確な情報を集め、専門家の意見も参考にしながら、冷静に戦略を立てましょう。適切な対応をすれば、地価下落エリアでも損を最小限に抑えて売却することは十分に可能です。
まずは現在の相場を正確に把握することから始めてください。
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監修者情報

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代表取締役 山内 章寛
